【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「ヴォルフ……」

 ヴォルフはわたしの耳もとで、激しく息を荒らげていた。わたしが呼びかけるとすぐに顔を上げ、目を細める。

「マリアーナ、好きだ。愛してる」
「わたしも愛してるわ」
「すべてを賭けて、おまえを守ると誓う」

 ヴォルフは街にいた時に見た結婚の誓いのように、わたしの額にそっと口づけた。

「わたしもすべてを賭けて、あなたを守ることを誓います」

 ヴォルフの額に口づけを返す。

 白い月の光に照らされて。
 嵐に翻弄されている船のように、その夜、わたしは揺らされつづけたのだった。





 わたしは夢か現かわからない暖かい闇を漂いながら、曖昧な頭で考えていた。

 美しい宝石も、人々の賞賛も、敬われる立場も、何もいらない。
 ずっと欲しかった家族からの愛も、もう色あせて思えた。

 わたしの過去ごと抱きしめてくれる、この力強い腕。
 わたし自身を見てくれる金色の瞳。
 それだけが、わたしの望むもの。

 わたしは愛するひとと生きていく――。

 ヴォルフの匂いと体温を感じながら、わたしは深い眠りに落ちていった。



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