【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 真剣なヴォルフの姿に思わず笑ってしまった。

「ヴォルフ、まだ生まれたら困るわ。産み月になってからじゃないと」

 赤子が生まれてくるまで、人間だと十月十日、野生の狼だと二、三か月くらいだったかしら。
 この子達は眷属神の子だから、どうなるのかはわからない。でも、さすがに、そんなにすぐには生まれないと思う。

「女神様にいろいろ聞いてみなきゃね」
「……いやな予感がする。出産の女神は、また別にいるんだ」
「え? まさか……」
「この話はやめておこう。今、来られると困る」
「え、ええ、そうね。また今度ね」

 苦笑しながら、再びそうっとおなかを撫ではじめるヴォルフ。

 まだふくらみはないけれど、この中にわたしとヴォルフの子がいるのね……。

 寝台の上でヴォルフの厚い胸にもたれていると、また眠くなる。
 静かな幸せが白い月の光に照らされた家の中にふわふわと漂っていた。





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