【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「魔獣を倒して家に帰ったら、優しく『お帰りなさい』をしてくれる番が良いですね。魔獣臭いとか罵らずに、あたたかく出迎えてくれる番が……うぅぅ」

 滂沱の涙を流すティグリス。
 あんた……いったい何があったんだ。

「あーあ。なんで僕達、独り身なんだろうね。愛と性の女神の眷属神なのに。くそー」

 僕がそうこぼした瞬間、その場の空気がピキンと固まった。三人の間に緊張が走る。

「しーっ! その名を口に出してはいけません!」
「出てくるぞ」

 そうだった……!
 地獄耳の女神に聞かれたら、何を言われるか。

「やばい……!!」

 しばらく口をつぐんで周囲をうかがっていたが、あいつが現れる気配は……ない。

 …………ほっ。

「大丈夫そう、だよね?」
「馬鹿者が」
「今宵は気楽な男同士の集まりです。水をさされないように気をつけましょう」

 後日、「理想の番像なんか語ってるからダメなのよ~」と散々からかわれることになるとはつゆ知らず……。

 男三人の虚しい酒盛りは、まだまだ続く――。


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