【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「この寝台、素晴らしいわね」
「気に入ってくれて良かった」

 子供達は、ヴォルフが作ってくれた赤ちゃん用の小さな寝台で、すやすやと眠っている。寝台のまわりに柵が付いているので、寝ている間に落ちる心配をしなくてすむ。

「マリアーナの体調は?」
「ん、大丈夫よ。最近は夜、ちゃんと寝てくれるようになったから」

 よちよち歩きができるようになった子供達は、体を動かす分疲れるのか、やっと夜の間、まとまって眠るようになった。
 それまでは、数時間おきに起きていたので、睡眠不足が続いて大変だったのだ。

 赤ん坊を愛しそうに見ていたヴォルフが、そのままの目でわたしを見て、そっと手にふれた。

「ヴォルフ……」
「口づけてもいいか?」
「……して……」

 音を立てないように、静かに口づける。
 ゆったりとした穏やかな口づけに、体がほどけはじめた。

「ん……」

 寝台に横たえられ、柔らかく抱きしめられる。ただ抱擁しているだけでも、ヴォルフの肌のあたたかさと規則正しい鼓動に、心の奥が癒された。
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