【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「ふふ、怒ってくれてありがとう。そのくらいは別にいいのよ。ただ大々的に聖女として祀られるなんて凄く恥ずかしいけど」
「そうか……」

 ヴォルフが何かを考えるように目を伏せた。

「どうしたの?」
「行ってみるか」
「え? どこへ?」
「おまえの故郷へだ」

 どうして急に? わたしはもうあの街への未練なんかないのに。
 戸惑う私を軽く抱き寄せて、ヴォルフはにやりと笑った。

「子供達も連れて、初めての家族旅行をしよう」

 一心不乱に昼食を食べていた眷属神達が、いっせいに顔を上げて不満そうにこちらを見た。

「なんだよなんだよ、僕達に幸せを見せつけてるの?」
「ぬう」
「うう、番や子供と旅とかっ、うらやましすぎますぅ……」

 目をすがめてヴォルフをにらむルナールに、口を肉でいっぱいにしながらうなるレオン。なぜかティグリスは号泣している。

「おまえら、ついてくるなよ」
「…………」
「…………」
「…………」
「絶対に来るなよ⁉」

 ヴォルフがしっしっと小動物を追い払うような仕草をする。
 うーん。拒めば拒むほど現実になりそうな予感がするんだけど、気のせいかしら……?


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