【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~

2.ふるさとの街へ



 久しぶりに訪れた故郷は華やかに彩られていた。

「わあ、凄い! この通りがこんなに綺麗になっているの、初めて見たわ」

 新市街と旧市街を分ける城壁を越えて中心地に入ると、主要な街路が色とりどりの花や旗で飾られている。祭りは明日――わたしの誕生日から始まるはずなのだけれど、もう準備は万端のようだ。

「ふぅん、少なくとも形のうえではきちんと祝うつもりらしいな」

 ヴォルフが少し目を細める。この街の人に対して不信感があるようだ。
 わたしも彼らを無条件に信じるつもりはない。
 幼いころから陰気で愚図なマリアーナは双子の妹のモーリーンに意地悪ばかりしていると、嫌な目で見られてきた。もちろんモーリーンに嫌がらせをした覚えなんてないけど、なぜかそういうことになっていたのだ。
 いつまで経っても花の咲かない『蕾のマリアーナ』。わたしはずっとそんなあだ名で呼ばれていた。

「宿は取ってある。行こう」
「まあ、いつの間に? お祭りの日は混みあうでしょうに」
「こういうことはルナールが得意だからな」

 そっか、ルナールが先に来て予約をしておいてくれたのね。
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