【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 その金額を見たおじさんは驚いて、硬貨を返そうとした。

「こんなにいらないよ」
「いや、四人分の絵だからな。特に妻をしっかり描いてくれれば、それでいい」
「そうかい。本当におかしな男だ。わかったよ、しっかり描かせてもらうよ」

 おじさんの自宅兼アトリエへそろってお邪魔して、数時間おとなしく座って描いてもらう。
 グラウとナハト、それにヴォルフも動きたくてもぞもぞしていたが、おじさんに怒られてじっとしていた。
 それでも絵はまだ完成しないらしい。ひと月ほど経ったら取りに来てほしいと告げられ、担保代わりに『聖女マリアーナと白銀の狼』の絵を渡された。
 ヴォルフはその絵をしみじみと見て、「家族の絵ができたら、これも一緒に買い取るよ」と言った。
 画家のおじさんはうれしそうに笑って、うんうんとうなずいた。





 ひと月後、ヴォルフが絵を取ってきてくれた。
 家族の肖像画を飾ったのは、湖の島にある我が家の暖炉の上。居間の中心にあって、一番みんなが見やすい場所だ。

「これ、グラウそっくりだー!」
「こっちはナハトそのまんまだ!」

 グラウとナハトが背伸びして、絵とお互いの顔を見比べている。
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