【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 ヴォルフも腕を組んで、満足そうに絵を眺めていた。

「マリアーナも綺麗だな。実物と同じくらいかわいい」
「ヴォルフったら」

 肖像画の中からは、家族四人がこちらを見ていた。椅子に腰かけたわたしの両側に子供たち、そして背後には、わたしの肩を抱くようにしてヴォルフが立っている。
 絵画の中の家族は、王侯貴族のような豪華な服は着ていないし、王冠や宝石もない。ふだんどおりの庶民の服装だ。
 でも、みんな、にこにこと楽しそうに笑っていた。絵の中から、笑い声が聞こえてきそうだった。

「素敵な絵になったわね。また来年、描いてもらいましょうか」

 わたしの言葉に、ヴォルフは首をかしげた。

「なんのために? 同じような絵が欲しいのか?」
「ううん。違うの」

 少しため息をついて、窓から湖を見つめる。
 聖域の湖は今日も美しく、午後の陽を受けてきらきらと輝いていた。湖のまわりには緑豊かな森が広がり、遠くには真っ白な雪の冠をいただいた山々が連なっている。
 何年も、何百年も変わらない風景。
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