【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 今だけは独りじゃないと思えた。
 ヴォルフはわたしを見てくれる。気遣ってくれる。
 聖女でも、モーリーンでもない、わたしを。マリアーナを。

 そして、ヴォルフはごろんとその場に横たわって、ふさふさした毛皮でわたしを包みこんだ。

 ……幸せ。
 幸せって、こういう気持ちなのかもしれない。

 ずっとここにいたい。
 聖女なんか知らない。初夜権なんてどうでもいい。
 ただ、ヴォルフと一緒にいたい……。

「凄く気持ちいいわ。もふもふ、大好き」
「…………」
「ヴォルフが好き。大好きよ」
「クン、クゥ――――――ン!」

 また、押し倒された……。
 のしかかってきたヴォルフに、強引に舐めまわされる。

「んもう、困った子ね」
「クン、クン、クゥン!」
「うふふ……」

 凍りついた白い月が、その時だけ、柔らかく、温かく瞬いた気がした。



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