【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 聖女として国王陛下と初夜を過ごし、その後も愛人として囲われて、誰かを恋うことも子を持つことも許されず、ひたすら国民の幸せだけを祈って死んでいく。
 それは代々の聖女が当たり前のように為してきたこと。
 人々が――わたし達が、安穏と豊かな生活を享受する、その陰で……。

 この国は、本当にそれでいいのだろうか。

「聖女継承の儀が楽しみですわね」

 女性神官が本当にうれしそうな顔をした。心から聖女の継承を喜ばしいと信じている表情だった。

 わたしは何も答えられずに、窓の外の空を見上げた。
 空は青く晴れわたっていた。
 いずれ夜が来ることも、白い月がその暗闇を照らしはじめることも、今は誰も考えていないように思えた。



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