今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
時雨に叶の奥さんになってもいいかと訊ねた。

『俺を愛人にする誓約書にもサインな』

人が悪そうに笑ってあたしの手を取り、右手の薬指に噛みついた。

『こっちは空けとけよ?』






お正月の前に、もうじき二度目のクリスマスがやってくる。この国では、記念日以外に大事な人に贈り物をする日。あたしにとっては生誕日。全てが始まった日。

あちこちでクリスマスソングを耳にしながらも、街は迫る年の瀬に彩られていて。今年はどう過ごすか、少しだけ悩みどころだ。

優先順位はもちろん叶と二人きり。でもきっと時雨も黙っていない。いっそ三人で。・・・と思ったけれど、結局どっちもあたしを独り占めにしたがる気がして。

詰まるところ。決定権は叶と時雨にある、という振り出しに辿り着いたのだった。
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