それはきっと、甘い罠。



手のひらは暖かいのに、指先は冷たい鞍馬君が今度は輪郭を撫でるように触れてきた。



その手の行き先は、私の唇に伸びてきて。


触れそうになった瞬間。



「調子乗りすぎ!!」

「あでっ!?」



ーーバシッと容赦なくなっちゃんが、鞍馬君の背中を叩いた。



鞍馬君の視線にはもう私はいない、完全になっちゃんの方に目は向けられている。




「てるしま~、それはねーじゃん!
 今いいとこだったのに!!」



「鞍馬ほんっと最低すぎ。お前の事嫌いじゃなかったけど一気に無理になった。
 こんなところで欲情しないでくれる?
 しかもこのみに。」



「えー?だって俺の顔見て真っ赤にさせる藍野ちゃんが悪くない?」


「……っ、違うよ!!」


いや違わないけど。


鞍馬君の事意識してるって、なんでだろう。本人にだけは認めたくない。


本人にだけは。







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