それはきっと、甘い罠。
「……」
「……あの、鞍馬くん?」
「あのさ、手退けたら真っ赤な顔治んの?」
「へっ?」
「勘違いじゃなかったら嬉しいんだけど。
もしかしてその顔の赤さ、俺が原因だったり?」
「……っ」
「わお、当たり?さっきよりまた赤くなっちゃったな、藍野ちゃーん」
からかわれる様に言われ
今度は私の長い黒髪に手の先が移動し、指に毛先を絡め遊び始める。
ケラケラと楽しそうな鞍馬君。
一体なにがしたいんだろう。
肌に触れずに、感覚のない毛先を触る彼の手にもどかしさすら感じる。
「……っ」
「うーん、藍野ちゃんめっちゃ可愛すぎて俺困っちゃったな、離れたくなくなってきた」
「……はっ、離れて」
「いいけど、じゃあ藍野ちゃんの放課後俺にくれるなら離してあげてもいいよ?」
「むっ、無理だよ。今日はなっちゃんと帰るから……」
「えー、照島とはいつも一緒じゃん。今日1日俺にくれるだけで楽しい思いいっぱいできるのになー。」