「槙野だったら、何味にする?」
「ヤヨ。雫。」

涼太の声がして、二人で振り向いた。涼太も卒業証書が入った黒い筒を持って立っている。

「人がずっと探してんのにイチャイチャしてんなよ。」

涼太は少し不貞腐れた顔をしていて、こんな顔をするのは珍しいなって思っておかしかった。
ヤヨちゃんが嫉妬した?って笑って、涼太がバーカって言いながらヤヨちゃんの頭を筒でコツンってした。

「花びら。」

涼太が言いながら、手を伸ばしてくる。スカートにくっついた桜の花びらをスッと取ってくれた。

ヤヨちゃんが風に揺れるスカートを見ながら「似合ってるよ。」って言って、「もう最後だけどね。」って返事をして、笑った。
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