Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
〈多々良 飛鷹〉
その並びを見て、妙に胸騒ぎがした。
たたら、ひだか。
心の中で読んでみる。
いや、いやいや……。
たまたま隣に書いちゃっただけ。
……確かに、佐藤とか鈴木とかよりは、本人の印象に近いけど……。
違う。関係ないってば。
単純な脳みそを笑い飛ばしたい気持ちの裏で、まさか、もしかして、という予感がわたしを揺すぶってくる。
……たった今、飛鷹と出会ったきっかけのこと、考えたところだったから。
色々とタイミングが重なったものだなと、思っちゃったから……。
偶然。
そう、偶然……。
…………。
……。
偶然じゃ、なかったら?
初めから飛鷹は……なにかの目的があって、わたしに近づいてきた、のだとしたら……?
自分のこと、なにも明かしてくれないのは、わたしに知られると都合が悪いことがあるから、だとしたら?
嫌な予感が、雨粒のように、わたしの背筋を冷たく流れる。
ううん。こんなの、思いすごし。
だって、飛鷹はわたしを助けてくれたんだ。
気遣って、優しくしてくれた。
なぎ高の人たちみたいに、酷い扱いだってしてこない。
わたしのこと、大切な女の子みたいに、……。
でも、……それは、わたしが都合のいい相手だから、かもしれないんだけど……。
恋愛ごっこの、単なるアソビならそれでいい。
最終的に傷つくことになってもいいから、今はもっと……一緒にいたい。
だけど、もし……あの暗く静かな瞳が、目の前のわたしじゃなく、もっと別のなにかを……見据えているのなら。
わたしは、どうしたら──。