【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
僕は何度でも恋に落ちる


「見えないほうが想像してしまうことってあるよね」

 セドリックが優しげな声で言う。

「見えないほうが……」

「うん。彼は今、何を考えているだろう? どんなに想っても、惚れた女には手が届かないんだよ」

「惚れただなんて、そんな」

 エドワードにそこまでの気持ちはない、と思うけど……。

 その時、マジックミラーに影が差した。
 もしかして、エドワード? エドワードがそこにいるんじゃ?

「…………!」

 さっきの声が聞こえたのか、それとも何か気になることがあったのか、エドワードが鏡をのぞきこんだ。
 じっと考えこむエドワードと目が合った気がして、わたしは顔をそむけた。こちら側は見えないとわかっていても、心臓が跳ねる。

 あの朝、わたしを後ろから抱きしめていたエドワードが脳裏に浮かんだ。苦しそうな声で「今だけ、頼む」と言って、わたしをかき抱いたエドワード。

「アーリア、来て」

 セドリックはわたしを立ち上がらせて、鏡の前に連れていった。

 鏡の向こう側……目の前には、エドワードがいた。エドワードからは見えないはずなのに、彼はじっとこちらを見ていた。何かをこらえるような、切ない瞳だった。

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