【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 その翌日、両親とも話しあい、ヒューバートとの婚約は正式に破棄された。

 昨日はヒューバートから矢の催促があったようだが、わたしの体調不良を理由に一日待たせたらしい。
 ヒューバートもわたしがごねるのではないかと、さぞかし不安だったことだろう。少しざまぁみろだ。

 パーティーの帰りに心配していたようには、お父様は怒っていなかった。
 いや、ものすごく怒ってはいたが、わたしに対してではなくヒューバートと王家に対してだ。「第一王子に続き、第二王子まで我が娘をないがしろにするのか」とクーデターでも起こしそうな勢い。

「あら、あなた。ちょうどよかったではないですか。あんなおつむの出来の悪い王子など、こちらから願い下げですわ」

 冷たい笑顔でズバズバと毒を吐くお母様。

「しかし、このままではアーリアに瑕疵が付いてしまう。よい縁組も叶わぬ。あんな性悪女にだまされ、アーリアを悪者にしようとするなど、どうしてくれようか……」

 お父様、伯爵家の体面よりもわたしの心配をしてくださるのね。最近頭が薄くなってきたとか思っていてごめんなさい。

「それはあなたの手腕次第ですわよ。大人の世界は怖いものだと思い知らせておやりになればいいわ」

 お母様、大人の世界よりもお母様が怖いです……。

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