【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「次第にアーリアの笑顔が曇っていったのも知っています。アーリアは必死に隠していたけれど、僕ならそんな思いはさせないのにとずっと思っていました」

 確かに、ヒューバートとエマの親しさが増していったこの一年ほどは、気持ちが休まらなかった。
 表に出していたつもりはなかったのに……、よく見ているのね。

 その時、わたしの手の甲にそっとセドリックの唇がふれた。セドリックはそのまま視線だけ上げて、わたしを見つめる。

「セドリック殿下!」

 セドリックはそのままの体勢で小さく笑った。ピンク色の血色のいい唇から、赤い舌がのぞく。

 ぽぽっと頬が赤くなるのが自分でもわかった。
 まだ子供なのに、なんだか色っぽい目をするから。

「…………!」

「あなたはとても甘いんだね。思っていたとおりだ」

 突然の言葉に、時が止まったような気がした。

「何を……」

「ハロルド兄上に相談したの」

 第一王子ハロルドは辺境伯令嬢と大恋愛の末結婚し、昨年長子が生まれた。

「本気で愛している人がいることを」

 本気……!?
 その相手って、もしかしなくてもわたしですよね!?

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