【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 結局、ヒューバートはエマと結婚後に臣籍降下し、次期辺境伯を拝命することに決まった。

 現在の辺境伯は、ハロルド王子の妻クリスティーナの父親である。その跡を継ぐ予定なのだが……。
 年を取ってからできた一人娘を王家に差し出す代わりに、クリスティーナがこれから産むであろう次男が、辺境伯を継ぐことはもう決まっている。

 ただ、現辺境伯は老齢だ。ヒューバートは、現辺境伯とその孫との間のつなぎ。一代限りの辺境伯として内定したのだ。
 故に、エマに子ができても跡を継ぐことはできない。むしろ、子作りは奨励されない境遇になってしまった。

 辺境は国防の最前線。領地は広大だが、荒れた土地も多い。
 質実剛健の気風で娯楽も少ないし、贅沢もできないだろう。エマには過酷な場所なのではないだろうか。

「ヒューバートは騎士並みに剣技の腕を磨いていると聞きましたよ。あなたにはおあつらえ向きの領地ではないかしら」

 王妃殿下は優美な扇を口もとで開き、じっとヒューバートを見遣った。

「この話は内々のことですけれど、陛下も了承されています。後日、改めて辞令が出ることでしょう」

< 58 / 113 >

この作品をシェア

pagetop