【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「セドリック様……セドリック、わたくしは大丈夫よ」

 夫婦の寝室の窓辺で、隣に立つ夫の頬に自分からそっとキスしてみる。

「アーリア……! 可愛くて美しい僕の奥さん」

 セドリックが感激したように目を潤ませて、強く抱きしめてきた。背中に回る腕も以前より長くて、たくましさを増している。
 この年ごろの男の子の成長は早いなあ。

「いつも綺麗だけれど、今日はひときわ麗しかった。まるで春の女神のようで……。花嫁姿のアーリアを誰にも見せたくなかったよ」

 そうは言っても、結婚式の最中のセドリックはとても自慢げに胸を張っていて、なんだか可愛らしかった。最近は大人っぽく見えることのほうが多いのに。

「あなたも素敵だったわ。わたくし、こんなに幸せでいいのかしら」

「もっともっと幸せになろうね」

 セドリックが潤んだ瞳のまま少しだけ背のびして、わたしのおでこに口づけた。

 その淡いピンク色の唇が、まぶたに、頬に下りてきて、そのうち自然と唇が重なる。ちゅっちゅっと軽い音を立て何度も口づけていると、ふわふわとした幸せに、とろんとしてくる。

 このまま眠ってしまいたいような気分……。

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