【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「本当に長かった……。僕、この一年間、よく我慢できたと思わない?」

 少年の声が、くたびれた大人の男のようにしおしおとつぶやく。

「そうだったかしら?」

 ちょっとからかいたい気分になって、上目遣いに睨んでみた。
 セドリックはすねたような笑みを浮かべて、可愛らしく口を尖らせた。

「もう、誰にも渡さないよ」

「セドリック……」

 セドリックの瞳はとろけていた。蜂蜜のようにとろとろに甘い、恋をしている男の目だ。
 セドリックはわたしをぎゅーっと抱きしめた。

「アーリア、心から愛してる」

「はい……。わたくしもですわ」

 わたしはそっとセドリックの胸を押して、二人の間に距離を作る。
 これ以上はセドリックが成人するまでおあずけだ。

「アーリア、やっぱりだめ……?」

「結婚を早めるための約束ですからね。おやすみなさい、セドリック」

「アーリアぁ……」

 セドリックが本当に情けない顔をしたけれど、そんなに急がなくてもいいと思う。これからずっと一緒にいるのだから。





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