【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 しかも、セドリックにはなんとも言えない色気があった。
 無邪気な笑顔の陰に、ふと垣間見える大人っぽさ。まだ子供といってもいい年齢なのに、ふいに大人の男を感じさせる瞬間があるのだ。

 高い王位継承権を持つ王子として、大人にまざって職責を果たしている自信なのかな?

「アーリア、どうしたの?」

「あ、いえ、なんでもございませんわ」

 まぶしい美少年に話しかけられて、ちょっと焦ってしまった。……毎日会っている夫なんですけどね。

「具合が悪いわけではないの?」

「ええ、少しぼうっとしていました」

「そう。それならいいけど……」

 心配そうに、わたしをのぞきこむセドリック。
 セドリックの透きとおった大きな瞳に、思わず照れてしまう。頬が熱くなってきた。

「……っ。アーリア、ちょっとこっちに来て」

「はい?」

 セドリックに手を引かれて、すぐ近くにある扉を開けて、中に入る。

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