【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 ちなみに、学園の理事長は、学園卒業後に第二王子ヒューバートが引き継ぐことになっていたが、彼は結婚して王族の籍を離れ、辺境伯領に旅立った。

 いくらヒューバートの穴埋めとは言っても、セドリックの在学期間に、わたしはちょうど学園の理事長になることになる。それは偶然ではなくて、もちろんセドリックが手を回した結果だ。

 まあ、愛しの旦那様と一緒にいられる時間が増えるのは、単純にうれしいからいいか。

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 制服のスカートの裾をちょっとつまんだ女子生徒たち。

 女の子はおしとやかだ。みんな、よいおうちのご令嬢だもんね。彼女たちは何やら頬をほんのり赤らめて、セドリックを見つめている。

 あらあら。セドリック、やっぱり人気があるのね……。

 わたしはちらりと隣を歩くセドリックを見た。

 少しふわふわした金髪に、透きとおった青い瞳。婚約していたころよりも頬がシャープになって、凛々しさも増している。お肌はつるつるで、当然ひげの一本も見あたらない。

 この半年で、さらに背が伸びた。わたしよりも少し高い。同じ学年の子たちの中でも高いほうかもしれない。

 整った容貌に、すらりとした体躯。
 この時期だけの硬質な少年らしさが、尊い……。

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