聖女じゃないと見捨てておいて今さら助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください!
「名乗るのが遅くなりました。私の名前はセルヴァ。ダルデム教の神官です」
そうセルヴァさんが名乗ったのは、先ほどの遺跡から少し離れた小さな祠(ほこら)でひと息ついた時だった。
祠の入り口ではデルたちが見張り番をしていてくれている。
名前は『指定』のスキルのおかげで知っていたけれど、ダルデム教は初めて聞くな。
「ダルデム教?」
「あなたをこちらの世界に召喚した組織です。
聖女召喚は本来聖女だけを召喚する魔法だったのですが、手違いであなたが一緒に召喚されてしまいました。大変申し訳なく」
土下座に近い形で謝られる。こっちの世界にもあるのか土下座。
「あ、いいってわけじゃないですけど、セルヴァさんのせいじゃないですし何度も謝っていただいたので大丈夫ですっ。
頭を上げてください。
むしろ命がけで抗議していただいて感謝してますので、そんなことされるとかえって申し訳ないです。それよりなんで聖女なんて召喚したんですか?」
このままだとセルヴァさんが謝罪を延々としそうなので話題を変えてみる。
「先ほどあなたが呪いを解いた宝珠のためです」
「あのルビーみたいな宝石でしょうか?」
「はい、あれは『起源の宝珠』と呼ばれるもので、本来この世界の闇と光を安定させる存在です」
「闇と光を安定?」
「はい、あの宝珠がなければ、世界は闇にのまれてしまいます。
闇の魔力はそこに生きる者をモンスターに変えてしまう力です。
その闇の魔力を浄化し続ける存在が『起源の宝珠』だったはずなのですが、突然宝珠は変質し、光を放たなくなり、世界を闇に染め始めました」
「闇……ですか?」
「最初デル様たちに黒いもやがあったとおっしゃっていましたよね?」
「あ、そういえば」
「それは、デル様たちが闇にのみ込まれかけていたからです。
あと数日すれば闇にのみ込まれ、理性のないモンスターとなってしまっていたでしょう。
聖獣は人間よりも強靭な精神力を持っているため、闇にのみ込まれるのが遅かったようですが、私やあなたの場合、おそらくこの森に数日滞在しただけで闇にのみ込まれモンスターと化していたと思います」
「えええ、そんな怖いものなんですかあの宝石!? 壊した方がいいですか?」
「いえ、あれはこの世界の安寧を保つために、なくてはならない存在です。
ですから聖女様に定期的に浄化していただき、闇を中和していただいていました」
「定期的? じゃあまた呪われちゃうんですか、あの宝石」
「はい。聖女様の使われる『浄化』のスキルでは、一時期呪いを解くだけが精いっぱいかと」
「じゃあさっきの宝石も定期的に見た方がいいですね」
「その必要はありません」
「……え?」
「私も信じられないことなのですが、これまでの聖女様の『浄化』は一時期呪いを封じるだけのものにすぎませんでした。
ですがあなたの『指定』のスキルは、『起源の宝珠』の呪いを完全に解いています。鑑定のスキルで調べたので間違いありません。
あなたのスキルの力は聖女様以上です」
セルヴァさんが真面目な顔で告げた。