聖女じゃないと見捨てておいて今さら助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください!
それから私たちは祠のすぐ近くに枯草と乾いた木の枝を集め、セルヴァさんに火をおこしてもらい、私はじりじりとお肉を焼き始める。
持ち手のあるステンレス製串で助かった。
バーベキューをする気満々だったのでちゃんと軍手もはめているので装備もバッチリ。
焚火で焼くのは初めてだな。
すぐ火が通るように、肉も薄めに切っておいたし、野菜も下茹でしてある。
鉄板がない状態で焼くのは難しい、焦げないように気をつけなきゃ。
じりじりと慎重に火で炙ってみたら、こんがりと肉と野菜の焼けたいい匂いが漂ってくる。
ああ、おいしそう。そういえばお昼も食べていなかったことに気づいて急にお腹がすいてきた。
「はい、焼けましたよ」
私は焼けたうちの一本をセルヴァさんに手渡した。
「私もいただいてもよろしいのでしょうか?」
セルヴァさんが遠慮がちに言う。
「もちろんです。食べないと、体が持ちませんよ」
「ありがとうございます。おいしそうですね。いただきます」
セルヴァさんが奇妙な祈るポーズをした後串を受け取って、ひと口食べる。
「これは……とてもおいしいです。このようなおいしいものは初めて食べました」
「お世辞が上手ですね」
あまりにもおいしそうに言うからちょっと照れてしまう。
「いえ、本当です、このような風味の肉や野菜は食べたことがありません。こう──」
なにか言おうとして目を宙に泳がせた後。
「甘みがあって、とろける感じというのでしょうか?
こんなやわらかい肉も、甘みのある野菜も食べたことがありません。とにかくおいしいです」
そう言って微笑んだ。喜んでもらえるのは純粋にうれしい。
私も自分用のお肉を食べようとするけれど……。
「はっはっはっはっ」
ものすごい羨望のまなざしを感じて私は振り返ると、デルたちがよだれを垂らしながら私たちのことを見ていた。
そりゃもう純粋な目で、へっへっへと舌を出しながら見ているのだ。
「その……私の分をお分けしてもよろしいでしょうか?」
セルヴァさんが、デルたちの無言の圧力に食べにくいのか、汗を流しながら聞いてくる。
ううう、デルたちはここで狩りして生肉食べられるのだろうし、人間の食べれるものはなるべく取っておきたいんだけどなぁ。
たとえデルたちがここのモンスターを狩ってくれたとしても、サバイバル知識はさっぱりなので、さばき方も肉の血抜きも熟成のやり方もよくわからない。ゆえに食べられる貴重な食料はこれだけだし。
でもこんなキラキラした目で見つめられて、無視できるほど私は心が強くない。
「えーっと、君たちにはウィンナーあるから待っててね」
私が言うと、よほどうれしかったのか、一番小さいアルがくるくると私の周りを回って喜んだ。
私は骨付きソーセージを三本焼いて、三匹のそれぞれにあげた。バーベキュー用に用意したもので奮発してわりと大きめなのでこれで我慢してもらおうと思う。
「くぅん」
「きゃん」
「わんわんっ」
三匹ともうれしそうにがつがつ食べてる。うっわかわいい。
犬を飼ったら、恋人できないって聞いて我慢してたけど、これなら日本でも犬を飼ってみればよかった。だいたい恋人ができたと思ったら、浮気して捨てられたし。
一瞬婚約者の顔が浮かんで頭を振った。もうあいつの名前を口にしたくもないや。
食べ終わって羨望のまなざしを向けてくるデルたちに私は微笑んだ。
「ごめん貴重な食料だからこれ以上は無理」
……と。