聖女じゃないと見捨てておいて今さら助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください!
「現大神官は、目に見える利益には貪欲です。
計算高く、それゆえわかりやすい。情はまったくありませんが、利益があるなら優遇します。
あなたの能力を知れば厚遇するでしょう。
テイムしたデル様たちも神殿に連れていけば、教団側も理不尽な要求はできません」
私がその言葉にチラリと祠の入り口にいるデルを見ると、聞こえていたのか、「任せて!」といわんばかりの表情でうなずいてくれる。
「今回あなたを殺そうとしたことをあなた自身が割りきれるのであれば悪い条件ではないと思います。
もちろん私もあなたが厚遇されるよう、交渉します」
そう言って、セルヴァさんは真剣な表情で私を見つめた。
えええ、ちょっと設定がヘビーすぎない。
異世界に来ちゃった系の話って、捨てた国を離れて他国で冒険者をやりながら、スローライフ的な日々を送るものじゃなかったの?
なんだかゲーム設定の世界なのに妙なところで現実的すぎる。
「セルヴァさんはどっちがいいと思いますか?」
私が聞けばセルヴァさんがうーんと考えるポーズをとった後。
「私の意見は、私の価値観において最善であり、あなたの価値観においての最善であるとは限りません。
私が意見を言ってしまうと、あなたもその意見に引きずられてしまう可能性があります。
それゆえ、意見をすることは控えさせていただきます。
判断はあなたにお任せいたします。どのような結論でも、できうる限りのサポートはさせていただきます」
そう言って、祈るポーズをした。
まぁ、セルヴァさん的にきっと戻らない方がいいという意見なんだろうなーというのは、これまでの発言から推測はできる。私の能力が知られたら悪用されるかもって言ってたし。
でも、セルヴァさんの言う通り、森で衣食住を確保するのも難しい。
生きていくのがやっとの生活をしていくよりは、教団に使われる立場でも保障された環境で生きたいという人もいるだろう。
でもなぁ。
キリカとカズヤが一緒にいる姿が浮かんで、悲しくなる。
あのふたりが視界に入る可能性があるだけでも絶対嫌だ。
「選択肢もなにも、人を殺そうとした教団に戻るなんて論外だし、私を見捨てたあのふたりと一緒の場所にいるなんて嫌なので、ここで暮らすしかないと思います」
私の言葉にセルヴァさんがほっとした表情になった。
やっぱり戻るのは反対だったみたい。
でも自分とは反対の意見も選択肢に入れてくれるあたり、この人は誠実なんだよね。
ちゃんと私個人の幸せと意見も尊重してくれている。誰かさんとは大違い。
一瞬カズヤの顔が浮かんでしまい、私はもう一度振り払うように思いっきり頭を振る。
「とりあえず、やれることは安全に住める場所の確保ですね。
最優先は飲める生活用水の確保でいきたいと思います。
できればダンジョンが見つけられればいいのですが」
セルヴァさんがそう言って腰に吊るしていた棍棒を手に立ち上がった。
「クミ様はここにいていただいてもよろしいでしょうか?」
「私は待機ですか?」
「なにがあるかわかりませんので。
本来この森は人間が立ち入ることすら危ういと言われるランク3のモンスターの出る領域です。戦闘慣れしていないクミ様にはきついかと」
セルヴァさんがそう言うと、デルたちがなぜか私の前にぺたりと座ってはっはっはっとセルヴァさんを見る。
「守ってくれるの?」と私が言えば「きゃん」とうれしそうにほえてくれた。
「君たち、ダンジョンがある場所と安全に暮らせるような場所、知らない?」
もともとこの森に住んでいるからなにか知らないかと、私が聞いてみると「わんっ!」と、三匹ともものすごくうれしそうに返事をしてくれるのだった。