聖女じゃないと見捨てておいて今さら助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください!


『付き合ってほしい』

 私にそう告白してきたのは、カズヤの方からだった。
 幼い頃、両親を亡くして児童養護施設で育った私は、大人に頼ることができず、なんでもひとりでやってしまう癖がついていた。
 そのせいか、年頃になった頃には、片思いしていた人から『お前といると男といるみたいで気兼ねがなくていい』と言われるような、女として見てもらえないタイプになっていた。

 そんな私が男性から告白してもらえたのも、付き合ったのもカズヤが初めてだった。

 職場が一緒で、なんとなく仲よくなって、告白してもらえて、付き合って二年目にプロポーズされた。その後、彼の両親にも挨拶に行って結納も済ませた。
 彼も彼の両親も優しくて、私にも家族が手に入るのかなぁーなんて、幸せに浸っていたのに。

 なんでこんなことになったのだろう。

 ──憧れてたんだけどなぁ。
 結婚して子どもを産んで、お母さんになって。子どもをいっぱいかわいがってあげて。
 夫婦揃(そろ)って子どもを連れて公園に行く風景なんかも、想像した。
 公園で家族一緒に遊んだ後は、子どもと手をつないで家に帰る──。
 そんな平凡な家庭を、そんなささやかな幸せを、やっと手に入れられると思ったのに、叶わないの? そんなの信じたくない。
 カズヤの浮気も今起こっていることも、全部夢だったらいいのに──。

 目をつぶって、つい現実逃避してしまう。

 恐る恐る目を開けたら、やっぱり森の中だった。

 見上げると木々の葉が生い茂り、森全体が黒い霧に覆われている。そのため辺りはすごく暗い。
 私は男の人の横に座ったまま、所在なさげに辺りを見渡すことくらいしかできなかった。

 一緒に転移してきたクーラーボックスに、少しだけど食べ物があるから、今日と明日のご飯はなんとかなる。お水も保冷用にキンキンに凍らせて入れておいたのが二本。
 でも私が持っていたのはほとんど調味料だからなぁ。

 今ある食料だけでは心もとない。

 森を出るためにもっと確保しておかないといけないのだけれど、セルヴァさんはいまだ目を覚まさない。まだ治ってないのかな?

『指定』のスキルを使ってみたけれど、表示されるのはセルヴァさんのステータスのみだ。

 セルヴァ・ランバイン
 レベル47 (神官)
 HP(ヒットポイント):235 MP(マジックポイント):322 SP(スキルポイント):120
 力:53 体力60 器用さ:55 すばやさ:54
 知力:80 精神力:100 幸運:40

 さっきは【治療しますか?】って出たのに、今度はなんでステータスだけなんだろう。

 この『指定』スキルってどういうもの? 
 まったく意味がわからない。わりとゲームは詳しい方だと思う。
 でもスキルで『指定』ってあまり聞いたことないからなぁ。

 私は自分のステータス画面を開いて確認してみる。

 法則性が不明、スキルを使うとなにか消費されるのかな?
 私のMPは減ってないみたいだけど、SPが4も減っている。
 たぶん一回目セルヴァさんを治す時に使ったのでSPを2消費して、セルヴァさんのステータスを見て2減ったのだと思う。
 いろいろ試したいけれど、下手にSPを減らしていざという時使えないのじゃ困るし、ほかになにか使えそうなスキルや魔法をもっていないかな?

 私が自分のステータス画面をポチポチしていると──。

「ぐるるるる」

 なにかの声がして、私は振り返った。そこにいたのは周囲に黒いもやのかかった銀色の狼。
 真っ赤な目で牙をむきながらこちらを見ている。まさかのモンスターと遭遇とか勘弁してよもぅ。
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