聖女じゃないと見捨てておいて今さら助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください!
「う、うまくいった?」
私は黒いもやが晴れた、銀色の狼を見ながらつぶやいた。
あの後、銀の狼にスキル『指定』を使ってみたのだけれど──。
【フェンリル・デルの呪いを解きますか?】
《はい》《いいえ》
表示された質問に、即行「はい」を押した。
そうしたら、対象物にかかっていた黒いもやが晴れ、銀色の狼がふるふると震えている。
こ、これはどういうことだろう?
狼は私を見た後「キャン!」と、かわいい声をあげながら、私に尻尾を振った。
も、もしかして……助かった……のかな?
私がへなへなとその場に座り込むと、銀の狼はうれしそうに顔をすりすりと擦りつけてくる。
なんだか友好的になったから、きっと大丈夫だよね?
私が恐る恐る背中をなでると、銀の狼はうれしそうに尻尾を振ってくれる。
そして突然目の前にステータス画面が開く。
そのステータス画面を見ると、新たな質問が表示された。
【フェンリル・デルをペットにしますか?】
《はい》《いいえ》
「君、私のペットになってくれるの?」
私がおずおずと聞くと、デルは「わんっ」とうれしそうにほえた後、キラキラした目で私を見ている。たしかフェンリルってファンタジー系では超強い狼だよね?
その子がペットになってくれるなら森での安全も保障されるかも?
私がデルを見ると、先ほどよりも小さくなっている感じもする。
かわいいから癒やされるし、一緒にいてくれるだけで心強い。仲間になってくれるなら、なってもらおうかな?
私はステータス画面の「はい」ボタンを押した。
【フェンリル・デル レベル400 があなたのペットになりました】
表示された内容を見て、思わず驚いた。
「ええっ、すごい。レベル400!?」
私がデルを見ると、ちょっと得意そうにふふんという顔をして、尻尾をパタパタ振っている。うん。こう見ると本当に……犬にしか見えない。
その後デルは、仲間のフェンリルちゃんたちを連れてきた。
でもデルと最初に会った時のように、その二匹にもやっぱり黒いもやがかかっている。目は真っ赤で今にも飛びかかってきそうな雰囲気で怖い。
「治してほしいの?」と恐る恐る聞くと、デルが『きゃいん』と尻尾を振りながらうなずく。
私が『指定』を使って治してあげると、残りの二匹もうれしそうに「へっへっへ」と言いながら私の周りをくるくると回りだした。彼らの名前はベガとアルだった。
デルが一番大きくて、アルが一番小さい。三匹とも綺麗な銀色の狼だ。
呪いが解けてうれしかったのか、スリスリしてきてくすぐったい。
ベガもアルも私のペットになりたいと申請してきたのでペットになってもらった。
う、やばい、なんだかかわいすぎて泣きたくなってきた。
わけもわからずこっちの世界に連れてこられて以来、初めての癒やしかもしれない。
何度思い返しても腑に落ちない。だいたいおかしいでしょう!? 勝手に間違えて召喚しておいて、無能だから捨てるとか。
あれだけ面倒見てあげたのに、ニコニコ笑いながら私を見捨てたキリカとか、婚約者を捨てて新しい女を選ぶ最低男のカズヤとか、人としてありえない。
悔しすぎて少し涙がでてしまい、私が目もとをごしごししていると、三匹が心配そうによってきてくれる。
ありがとう。君たち!
抱きつくと、銀の毛がホワホワでもっふもふで気持ちいい。
ああ、犬を飼うと婚期が遅れるっていう意味が今わかった気がする。
かわいすぎるし、癒やされすぎる。私はデルの毛に顔を埋めてモフモフする。
「あ、そうだ。残りSPが4しかないからスキルを使える回数は二回なの。まだ呪いを解きたい子がいるなら、SPが回復してからでいい?」
「きゃん!」
私の言葉に三匹は元気よく返事をした。
私はちらりとセルヴァさんを見る。傷は治したはずなのに、まだ目を覚まさない。
生きているのか心配になって呼吸を確認してみるけれど、息はしている。
でも、よかった。助かって。
あのまま死んじゃったら私のせいだし、見ず知らずの私を、命がけで守ってくれようとした人が死ぬのは嫌だ。
それにまだなんとか冷静でいられるのは、話が通じそうな人が一緒にいてくれるのもあると思う。
これでひとりだったらどうしていいかわからなくて、パニくってた自信がある。
とにかく安全な場所に行かなきゃ。
SPってどうやって回復するんだろう?
あと二回残っているけど、いざという時に取っておきたい。だいたいゲームだと、休憩すると回復するから、休憩してみようかな?
「ねぇ、君たち、どこか安全に休める場所、知らないかな?」
私がそう尋ねると、デルたちがワンワンと三匹で会議を始め、「わんっ!」と、うれしそうに私に尻尾を振った。