スペシャル企画 儚く甘い 番外編追加しました
紗那は瞳を閉じて頷いた。
紗那が目を閉じた瞬間、瞳の端から大粒の涙があふれ出した。

ギュッと唇をかみしめて涙を流す紗那。
我慢してる。

いつだって紗那はこうして自分の感情を出さないように我慢して、心があふれ出すまで吐き出そうとしないんだ。

「紗那」
俺の言葉に紗那が何も言わずに頷く。
俺たちが一緒に過ごした時間は決して短くない。
その間にお互いのことを理解して、受け止めて、支えて、一緒に手を繋いで並んで歩んできた。
片手は紗那の手を握り、もう片方の手で紗那の涙を拭きながら「大丈夫」俺はそんな何も確証のない言葉を繰り返した。

紗那は体力も落ちているのか、涙を流したまま眠ってしまった。
今はどうか紗那の体が安定することを願う。

神様がいるなら、どうかお願いしたい。
もう悲しい結末はいらない。
どうか・・・これ以上紗那に苦しみを与えるのはやめてほしい。
どうせなら俺だけに与えてくれればいい。

どんな苦しみも痛みも悲しみも、俺は耐えられる。
紗那さえいてくれれば俺は、耐えられる。
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