悪役令嬢の復讐マリアージュ
「おはよう、準備出来たよ」
着付けを終えて、部屋にやってきた楓くんに。

「おはよう、じゃあ先に重松の車に乗ってて。
もうエントランスで待ってるから」
心臓をバクバクさせながらも、クールに振る舞ってみせる。

ただし……
顔は見れないけどっ!

「ていうか、着物すごい似合ってる」

「っっ!……っそう」
そっけなく応えながらも。
いやあっ、見ないで恥ずかしい!

今日は2人とも和装で。
出張着付けの先生に、先に施してもらった私は、紅と朱色を基調とした(あで)やかな熨斗文様の総絞りを着ていて。
楓くんは、事前に仕立てていた紋服を着ていた。
ああ私も、その姿が見たい!

「……あと、一緒に出よう?
着物だから、エスコートさせてほしんだけど」

「慣れてるから結構よ。
先生と話もあるし、先に行ってて」
ああ優しい楓くん……
でもごめんね、まだ2人っきりは耐えられないのっ。

そうして。
先生を見送ったあと、車に乗り込むと。

しっ、視線を感じる……
何なの楓くんっ。
そんなに着物姿が気になるのっ?
もしかして着物フェチ!?
だとしても、チラチラ見すぎ!
もう耐えらんないっ。
たまらずプイと、窓の外に顔を向けた。

なのにすぐ、重松に呼び戻される。
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