ときめきの香りは貴方ですか?
私は助手席に乗って、シートベルトを締めようと手をかけた。

「あれ?ちょっと待ってくださいね、う、上手く引っ張れなくて」
私が戸惑っていると
「焦らなくていいよ。ちょっと前ごめんね」
と笑いながら、私に体を寄せてシートベルトを引っ張ってくれた。

「す、すみません」
私は、恥ずかしさで顔がほてった。
さすがだ・・・ちょっとしたことも何事もなかったかのようにしてくれる。

「永富さん、今からどこに行くんですか?」
「あぁ・・・飛び出しちゃったけど、どこに行こうかな」
「えっ!」
私はびっくりと何が起ったのか分からず、ただ、永富さんを見つめた。
「ごめんね、ちょっと息抜きしたくなってね。風谷さんも連れて来ちゃったよ」
来ちゃったよって・・・

「まぁ、長くは席外せないから、少しだけドライブして帰るよ。少しだけ付き合ってね」
そう言って、永富さんは車を走らせた。

さっきは今までに見たことがない、苦悩した永富さん。

「たまには外にでるのも息抜きでいいよ。総務部長が一緒だからいいでしょ?」
今度はいたずらっ子のような顔をしている。たまたまだったのかな?

「はいっ!」
私は何だか嬉しくて、満面な笑みを浮かべた。
横目でちらっと私を見て、くすくす笑い出して、
「風谷さんて、いつも眉間にしわ寄せて仕事してるから、そうやって笑った顔見れるなら、一緒に連れ出して良かったよ」
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