ときめきの香りは貴方ですか?
「ごめんね、急な依頼で。話は後で、段取りだけ説明するからこっち来て」

永富さんも龍太も少しびっくりしてくれたけど、城崎さんはいつもと変わらない。
調子に乗ってしまったかな。
私らしくない。

「原稿、読めた?分からないところとかない?」
「はい、原稿は一通り読めました。あとは人前で読めるか心配ですけど」
「失敗してもいいからね。それと、イベントだから楽しむんだよ。風谷さんが楽しくないと、それが皆に伝わるからね」

城崎さんは、とても優しい目で、私に笑顔でゆっくりと語りかけてくれた。

「はい」
いつもの城崎さんと違う。とても柔らかい口調で、安心する。
私は、いつもと違う城崎さんに胸がきゅっとなった。

そうだ、英語を話せるようになって、外国人の人達と話が通じた時、楽しかった。
字幕も見ずに映画に集中できる楽しさを知った。英語を学ぶことの楽しさを知った喜びを込めて話そう。

いよいよ、始まる。
なっちゃんと龍太に
「じゃあ、行ってくる」

そう言うと、龍太が3人の中心に手の甲を上に差し出すと、その上になっちゃんが重ねた。
私もその上に置き、円陣を組み
「3人で初めてのイベントだ!頑張るぞ!」
『おー!!』
3人は外に聞こえないように小さな声で、お互いにエールを送った。

「城崎さん、行ってきます」
「あぁ、頼んだよ」
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