ときめきの香りは貴方ですか?
「ねぇ、風谷さん」
「はい・・・」
「下向いてないでこっちみて」

私は恥ずかしさのあまり、城崎さんの胸元まで視線を上げた。

「もう駅に着くからね。少しだけ顔見せて」
そっと、上を見ると城崎さんが優しく微笑んだ。

そして、周りに聞こえないように耳元で
「今日はありがとう。今日はうちにとって今後の大事なイベントだったんだ。助かったよ」
耳元で優しく語りかけられた。

城崎さんの声は、甘い低音で心地よく、体中に響く。

「今日の髪型、風谷さんに似合っている」

褒められて恥ずかしいのと、見つめられた目に心臓の高まりが止まらない。

帰ってきて事務所に戻ろうとした時、ちょうど永富さんも帰ってきて鉢合わせた。

「永富さん、今日は風谷さんに手伝ってもらって助かりました。ありがとうございます」

「今日はお疲れ様。風谷さん、どうだった?」
「緊張しましたけど、すごく勉強になりました」

永富さんに拍手された喜びを伝えると、優しい眼差しで頷いて聞いてくれた。

すると永富さんがふと、右手で私のサイドの髪を上から撫でた。

「あっ、ごめん、ゴミが付いてたから」
「あっ、ありがとうございます。じゃあ、私、先戻りますね」
永富さんにそう伝えたあと
「城崎さん、色々と今日はありがとうございました」
私は城崎さんにお礼を言って、総務部へ戻っていった。
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