ときめきの香りは貴方ですか?
「これ、何ですか?」
「昨日の風谷さんのスピーチの映像。ご両親、びっくりさせてあげて」

「あの時のこと、聞こえてたんですか?」
私が城崎さんを見ようと顔を上げると、直ぐ近くに顔があった。

私は慌てて、机の上のSDカードに目を向け、
「あっ、ありがとうございます。両親、凄く喜ぶと思います。私が勤まるのか心配してますので・・・」

「全然心配いらないのにね・・・まぁ確かに最初の頃の風谷さんなら、心配になるけどね」
「そうですよね・・・あっ、SDカード遠慮無く、いただきますね」
「良かった。喜んでくれて」

城崎さんが、耳元でささやいて、私はその声に体に電気が走るようにゾクッとした。

「どうしたの?顔赤いけど・・・」
そう言って私の顔を覗き込んだ時、事務所の扉が開いて、永富さんが入ってきた。

直ぐに城崎さんが私から離れ、
「じゃあね」
といって、事務所を出て行った。

永富さんが私の方に来て、
「風谷さん、顔赤いけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫です。昨日のスピーチの映像を頂いたので、思い出して熱くなりました」
まさか、城崎さんの言葉にどきっとしてましたと言えない。
はぁ~、絶対面白がってるよ、城崎さん。
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