ときめきの香りは貴方ですか?
「城崎さんのプレゼンですか・・・貴重ですね、楽しみです」

「あまり、プレッシャーかけないで。風谷さんに言われると、どきどきするから」
「もー、からかわないでください」

私はどきっとした気持ちを隠すようにそう言うと、城崎さんはただ、笑っていた。

「そこにプレゼン資料あるから、少し目を通してて」

プレゼン資料を見せてもらうと、定型の資料と、城崎さんが作った資料が一緒にあった。

色々な案が事細かく描かれている。
資料を読むだけで、その世界に引き込まれていく。

「そろそろ、着くからね」

プレゼンをしている城崎さんは、相手の話を聞き洩らさず、瞬時にどんなことがニーズに合うかをいくつか提案している。

横で聞いていると、その情景さえも頭に浮かぶほどだった。

いつも私をからかっている城崎さんともクールな城崎さんとも全く違う。

心が震える。
ずっと見ていたいと思った。

城崎さんの説明に見入っていると、ふと、視線を感じた。
役員という人の隣に座る、総務部長の確か寄木(よりき)という人だ。

何だろう、目が笑ってない。
それにねっとりした目線、ぞっとして悪寒が走る。

今日はプレゼンだけで終わりだったので、後日、改めて打ち合わせをすることになり、城崎さんは先方と約束をして、会社に戻るため車に乗った。

「今日のプレゼンどうだった?あんな感じで打ち合わせするんだ。中河さんも三嶋もそのうちかな?」
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