ときめきの香りは貴方ですか?
「・・・本当にいいんですね、まぁダメと言われても、もう止まらないですけど」

「お前が羨ましいよ。自分に真っ直ぐで、そして芯が強い。風谷さんもよく似てるよ」

「・・・もう、本当のこと、教えてくれませんか。彼女への思い」

永富さんはしばらく黙っていたが、ぐっとウィスキーを飲み干して、ゆっくり話始めた。

「まさか、僕が新入社員の10歳も年下の子を好きになるなんてね・・・」
永富さんは照れ笑いしながら、話続けた。

「30過ぎて、人を好きになるのがこんなに苦しいもんだなんて、思いもしなかったよ。10歳も年上で、総務部長がこんなこと考えたらダメだと思ったけど、家も何もかも投げ捨てて、風谷さんを連れて逃げ出したかった。2人で幸せに暮らせればそれでいいと思った」

永富さんはウィスキーのおかわりをお店の人に促した。

「自分に、好きになったらだめだと何度も言い聞かせたよ。でも、どんどん彼女を好きになってしまった。それと、重圧からも解放されたかったのかもしれない。情けないよな。」

永富さんは、おかわりしたウィスキーをまた口にする。

「でも、それは俺にとっては幸せでも彼女にとったら幸せじゃない。自己満足だけのことだ。
俺は、上司としても男としても最低な選択をするところだった」

永富さんの遠くを見るような瞳が、潤んでいるように見えた。
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