ときめきの香りは貴方ですか?
「この間彼女に、『永富さん、私成長できましたか?皆さんと会社の力になれてますか?』と問われたよ。彼女は会社のために、仲間のために、自分のために色々考えている。そんな彼女の人生を僕の事情に巻き込んで、あの笑顔が見られなくなる方がもっと辛い」

この人は、会社を背負う重圧の中で、風谷さんへの思いを抑えて、今まで1人で抱えてきたんだろう。

「だから僕は会社を守っていくよ。それに風谷さんのような思いをしている従業員が、仁美の会社にもいるはずだ。その夢を途絶えさせてはいけない」

「仁美さんと結婚しなくても、会社を守れる方法ってあるんじゃないですか」

「仁美は彼氏が出来た時、親父さんに会わせたらしいけど、信用できないって猛反対されたらしい。お見合いは嫌だって言うし。あと・・・」

急に永富さんの表情が険しくなった。

「3ヶ月前くらいから、仁美の会社に不穏な動きがあるらしくてね。一部の役員が、会社を知らない仁美には経営は無理だし、他から来ると、自分達の立場が危うくなると思うんだろうね、揉めてるらしいんだよ。後継ぎはどうなるんだって。今のうちに、役員から候補あげるのも1つじゃないかってね」

それでこの間仁美さんが・・・

「だから、婚約の話が進んでるんだ。仁美は家族みたいなもんだから。ほっとくわけにもいかない」

永富さんは大きなため息をついて
「でも、気持ちは誤魔化せないよね。風谷さんへの愛情は部下だからと思ったけど、違った。ダメだと頭では理解してるけど、自分の気持ちがコントロールできないってこと、初めて知ったよ」

「俺は感情をぶつけてくる永富さん、結構好きですよ」

「ははっ、ありがとう・・・近いうちに、俺は仁美との婚約を発表する。頼むから、風谷さんがお前に告白されて、俺に泣きついてくるようなことはやめてくれよ。俺の決心が揺らぐ」
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