水鏡
 声に呼ばれて私は下を見た。下には湖しかないのに……。さっきと同じように水面を見ると、そこには綺麗な女の子がいた。
 色白で透き通る肌にぱっちりした目。血色の良い頬と唇は愛らしく感じる。その女の子も癖っ毛だが、欠点ではなく彼女の魅力を引き立てるものとなっている。
 しかし綺麗な女の子が湖に写っている場所は、本来私が写る場所なのだ。
 願いが叶ったのかと鞄に入っていた手鏡で顔を見ると、湖の顔はどこにもなく冴えない醜い顔が写っているだけだった。

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