甘い毒に溺れ堕ちて
「藍くんのおうちは、お盆は帰省する?」

「んー、どうだろ。昔はよく遊びに行ってたけど、ここ数年は全然。従兄弟とも小学生以来会ってない」



目を伏せた彼から、「元気にしてるかなぁ」と寂しそうに呟く声がこぼれる。


夏目くんも言ってたように、やはり歳を取るごとに足が遠のいていくらしい。

私の場合は同じ町内だから、お盆関係なく気軽に行けるけれど、茉耶のところみたいに地方に散らばってると来るだけで一苦労だもんね。交通費の工面もあるし。



「話変わるけどさ」



ノートに書き込んでいた手を止めた藍くん。

鉛筆を置くと、私の右手をそっとすくい取った。



「前から思ってたけど、手、綺麗だよね」

「そ、そうかな?」

「きめ細かいし、すべすべしてる」



感触を確かめるみたいに、手の甲を撫でられた。

何度も何度も、細い指先が肌の上を往復して。鉛筆を落としてしまわないよう、握る手に力を込める。
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