甘い毒に溺れ堕ちて
「らんおにいちゃん、かっこよかったね!」

「ね! キラキラしててかみさまみたいだった!」

「そうだね……」



消え入りそうな声で相づちを打ち、住宅街に続く道を歩く。

……まだ、回復しきれてないのかな。うん、きっとそうだと信じたい。



「あと、おじさんとおなじにおいもしたよね!」

「えええー? おじさん? しなかったよー?」

「したよ!」

「してない! おふろのいいにおいだったよ! らんおにいちゃん、こうこうせいなんだよ? おじさんなわけないじゃん!」

「そうだけど……ほんとに、ほんとにちょっとだったけど、したんだもん!」



そんな願いは、ムキになって主張する妹の声であっけなく砕け散った。

疑惑が確信へと変わると同時に、ふと、春休みに観たテレビ番組を思い出す。


『女性は遺伝子やホルモンなどの関係から、男性よりも嗅覚が敏感なんですよ』


バラエティだからと話半分に聞いてたけれど……全くの嘘ってわけではないのかもね。



「おねえちゃんも、したよね?」

「うん。ほんの少しだったけど」



シャンプーの香りに交じってタバコの匂いがしたよね──とは言わず。

自転車をその場に立てかけてしゃがみ、涙目の晴月の背中をそっと擦った。
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