甘い毒に溺れ堕ちて
「っ、あの……」

「ん?」

「ひ、人来るから……」

「大丈夫。ちゃんと確認したから」



懐かしさと清涼感のある香りが鼻に届いて、安堵したのもつかの間。

顔を覗き込まれて、心臓が早鐘を打ち始める。



「……答えないってことは、図星?」

「そう、いうわけじゃ……」

「だったら答えて」



眼差しの圧力に耐えきれなくて目を逸らしたら、反対側の手が洗い場の縁に伸びてきた。


前も後ろも、右も左も、逃げる隙間なし。

この状況を打破するには正直に話すことのみ。それ以外の選択肢は全て奪われてしまった。



「……話す、から。だからちょっと離れて」

「ほんと? 逃げない?」

「逃げない。ちゃんと、全部、話すから」
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