甘い毒に溺れ堕ちて
ドスの利いた低い声が聞こえたのち、彼がゆっくりと顔を上げる。



「言っとくけど、日付が回る前には帰ってるから。補導もされないように、毎回家の近くまで送ってもらってる」

「で、でも……」

「百害あって一利なしなのは否定しないよ。けど、吸ってる人はみんな悪い人なの?」

「っ……」



悲しみと怒りが入り交じった眼差しで押し切られて、肩を掴んでいた手をそっと離した。



「……ごめん」

「いいよ別に。夜遊びは本当のことだし」



藍くんはうつむく私の頭に手を乗せると、「ムキになってごめんね」と優しい声で謝った。


……まさかあそこまでとは思わなかった。

人間なんだから喜怒哀楽があるのは当たり前だけど、あんな、冷たい目つきで睨まれたのは、初めてだったから。



「多分、その人の匂いが移ったんだと思う。ここ最近よくあのパーカー着てるから」

「……そうなんだ」
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