甘い毒に溺れ堕ちて
希望の長さを伝えて、カットスタート。

首にタオルが巻かれた後、白いポンチョを着せられた。



「藍くんから話は聞いてたけど、本当にサラサラだね。指がするする入る」

「そ、そうですか?」

「うん。綺麗な人はたくさんいるけど、この長さでこの質感をキープしてる人はなかなか見かけないから。黒染めはしてないんだよね?」

「はいっ。パーマも、縮毛矯正も、何もしてないです」

「マジ? 天然? すごいね。ご家族もこういう感じなの?」

「そうですね。父が直毛で、今は白髪染めしてるんですけど、若い頃は黒髪だったみたいで……」



鏡越しで会話。美容院あるある。


藍くんは仲睦まじく話していたけれど、私は初来店の新規客。


ただでさえお店の雰囲気に圧倒されたというのに、こんな近距離で褒められて、髪の毛を触られて。


生まれて初めて男性の美容師さんに担当してもらっていることも相まってか、椅子に座った途端、心臓がバックンバックンと暴れ出して……。



「切るのがもったいないなって思っちゃうくらい、ほんと綺麗。今日は来てくれてありがとね」

「いえっ。私のほうこそ、ありがとうございます」
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