甘い毒に溺れ堕ちて
「出会ったのは去年の5月。連休最終日だったかな。遊びに行くようになったのは、半年ぐらい経った後」

「半年、ですか?」

「うん。頭皮のために、カラーは3ヶ月に1回の頻度で来てもらってるんだけど、カットだけの時は2ヶ月に1回の頻度で来てるから」



徹平さんと彼方さんと同じく、藍くんも常連客らしい。

とすると、初回からずっと担当してもらっているのか。



「初めて会った時のことは覚えてるよ。今日みたいに外で掃除してたんだけど、蚊の鳴くようなか細い声で『店員さんですか……?』って尋ねてきてね」

「今と全然違いますね……」

「顔にも全身にも、不安の文字が書いてあってさ。ちょっと泣きそうな感じだった。怒られそうだからここだけの秘密ね」



入る前も入った後も、終始不安が抜けない様子だったという。


学校では無愛想でメンチ切ってた藍くんも、初めての場所では緊張してたんだな。


1人なら心細いよねと共感する反面、初来店でブリーチをお願いしたのか……と、ますます謎が深まる。
< 184 / 213 >

この作品をシェア

pagetop