甘い毒に溺れ堕ちて
呟いた途端、駐輪場での光景がよみがえった。


ドジっ子呼ばわりされたことは完全には許してないけれど。

あの時誰もいなかったら。藍くんが支えてくれていなかったら。きっと遅刻だけじゃ済まなかっただろう。



「……じゃあ、1ついい?」



許可をもらう声が聞こえて顔を上げた。



「うん。あんまり高価な物は買えないけど……」

「大丈夫。すっごく良心的だから」



ふははっと吹き出して笑う藍くん。

黙ってると怖そうな印象だけど、笑うと目がなくなるところが彼の魅力の1つでもある。


愛らしい笑顔に微笑ましさを感じていたら、私の耳元に顔を寄せてきて……。


「俺とデートして」

「は、はぁっ!?」



慌てて口を手で覆うも、時すでに遅し。

大声だったのと至近距離のせいで、私たちを見る彼らの目が、今朝以上に大きく見開かれている。



「ね? 良心的でしょ?」

「ど、どこがっ……」

「まあちゃん、どうしたの……?」

「いやっ、なんでも……」

「じゃ。約束だからねー」

「あ、ちょっと!」



拒否権を与えず、藍くんはいたずらっ子みたいに舌を出して戻っていった。
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