甘い毒に溺れ堕ちて
仲良く声を揃えた2人が、折りたたまれたプリントを渡してきた。

どちらも開いて見てみると、歴代の紙幣がズラリと印刷されていた。



「おねえちゃんはどれみたことある?」

「うーん……あっ、これかな。1000円札。小さい頃、おじいちゃんとおばあちゃんからのお年玉に入ってたの」



2つ前の旧札を指差す。


まだ園児だった頃。当時私が大好きだったキャラクターのポチ袋に入ってて。

お父さんが、『うわっ! 懐かし!』って私以上に目をキラキラさせていたっけ。


……園児だから当然全額回収されちゃったけれど。



「ただいまー」



回想していたら、リビングのドアが開いて風斗が帰ってきた。



「おにいちゃん! おかえり!」



晴月は私の手からプリントを取ると、風斗の元へと駆け寄っていった。



「ねぇねぇ! おにいちゃんは、むかし500えんさつがあったのしってる?」

「お札? 小銭じゃなくて?」

「うん! かみのおかね! きょうね、おかねのおべんきょーしたんだよ!」



床にあぐらをかいて座った風斗に、晴月が「せんせいからもらった!」とプリントを渡した。

1つ1つ指を差して、習った内容を教えている。



「おねえちゃん」



微笑ましい光景を眺めていたら、晴日がクイクイと制服の袖を引っ張ってきた。



「これ、おねえちゃんにあげる」

「えっ。いいの?」

「おねえちゃん、おかねほしいんでしょ? いっぱいあるからすきなのとっていーよ」



返却しようとする手を押し返されてしまった。


……聞かれちゃってたのか。そうだよね。順番が来るまでおとなしく待ってたもんね。

こんな幼い子から気を遣われるなんて。
あぁ、穴があったら入りたい……。


いたたまれない気持ちになり、「ありがとう」と受け取った後、そそくさとリビングを出た。
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