甘い毒に溺れ堕ちて
後ずさりする私の背後に回った茉耶が、グイグイと背中を押してくる。



「キャラのやつがいいよね? 無地のやつも見る?」

「別にどっちでも……」

「ダメ! ちゃんと選んで!」



強制的に鏡の前に立たされた。1色ずつ服を当てられる。



「むむむ、どれも似合うなぁ。まあちゃんは何色がいい?」

「……黒」

「また!? さっき買ってたじゃん!」

「何枚あっても困らないんでしょ? なら同じ色の服が何枚もあったっておかしくないよね?」



鏡越しに論破すると、ぐぬぬ……と親友の顔が悔しそうに歪む。


茉耶のことは好き。

おうちだろうが公園だろうが、どこへ行っても、どんな遊びでも、楽しめる。

会話がなくても落ち着く。隣にいるだけで安心感に包まれる。飽きたことなんて1度もない。


けど……この時間だけは、昔から憂鬱。



「でも、せっかく来たんだしさ。1枚くらい明るい色があっても……」

「いいの。昔たっくさん着たから」
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