甘い毒に溺れ堕ちて
藍くんは陳列棚に手を伸ばすと、茉耶が選んだのと同じ色のTシャツを取って、私の体に当てた。



「あー……やっぱりな」

「出た。色味警察」

「うるせぇ。真彩ちゃんは今持ってる服の中で、白と黒以外、何色が多い?」

「紺色かな。デニム入れるなら青もそこそこ」

「だとしたら……うん、やっぱこっちだ」



オレンジの次は、水色とミントグリーン。

されるがまま。なんだか着せ替え人形になった気分。



「買うとしたら、この2色かな。赤も悪くはなさそうだけど、髪色に合わせるならこの2つがベストかも」

「へ、へぇ。そうなんだ」

「えええ。オレンジはダメなの?」

「ダメじゃないけど、けっこう黄色みが強いから。来栖さんの髪色なら馴染みそうだけど……」



フォローを入れながら、藍くんがオレンジのTシャツと赤のTシャツを茉耶の体に当てる。

ブツブツと真剣な表情で呟いているが、聞き慣れないワードが多すぎて、頭が追いつかない。



「……占部さん、買うなら今のうちにお会計済ませてきていいよ」

「ううんっ。大丈夫。私もさっき買ったから」



スタイリストモードを発動した彼を眺めていると、夏目くんにトントンと肩を叩かれた。



「いつも、あんな感じなの?」

「ああ。1回スイッチ入ると長いんだよ。アドバイスはありがたいんだけど、1投げたら10で返してくるからさ。だから服買う時は毎回別行動」



苦笑いする彼から、はぁ、と溜め息が漏れた。

男女別に分かれた後も、1人で見て回っていたらしい。


夏目くんもおしゃべり藍くんの被害に遭っていたのか……。友達でも長々と話されると疲れちゃうよね。

藍くんほど熱中してる趣味はなくても、自分も早口にならないよう気をつけようと肝に銘じたのだった。
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