甘い毒に溺れ堕ちて
どこからともなく入ってきた声。

目の前の彼と息を合わせて隣を見たら、買い物袋を持った茉耶と、ムッと口をへの字に結んだ藍くんが立っていた。



「うおおお、ビックリした。いたのかよ」

「ずいぶんと会話にお花を咲かせまくっていたから、邪魔しないようにってタイミングをうかがってたんだよ」



藍くんは夏目くんのスマホに視線を移すと、「小っ恥ずかしい写真を見せやがって……」と溜め息交じりに呟いた。



「メンズにはあんま馴染みないから、ど忘れするのは別にいいけど。誤解を招くような言い方すんなよ。なんだよ、スケスケのガウチョパンツって」

「ごめんごめん」

「あと、ペイズリー柄な。色も、紺じゃなくて濃藍(こいあい)って色だから」

「はいはい」

「勾玉でも、ミトコンドリアでもないから!」

「わーかったってば。ペイズリと濃藍ね」

「ペイズリー! 伸ばし棒いるから!」



細かく指摘する藍くんに、夏目くんが慣れたように相づちを打つ。


……これは溜め息をつきたくもなるな。

でも、夏目くんもあからさまに耳塞いでるし、どっちもどっちに思えるけれど……。



「まあちゃん、先に行っとこうか」

「そうだね」



長期戦になると予想した茉耶に頷いて、そっと席を立ち、休憩スペースを後にした。
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