甘い毒に溺れ堕ちて
お店に入り、ずんずんと奥に進む藍くん。

服を畳む店員さんに会釈しながら着いていくと、『SALE』と書かれた陳列棚の前にやってきた。



「これ、だったっけ。ずっと見てたの」

「っ……」



声を詰まらせて、手渡された服をハンガーごと受け取る。


白い襟が付いた、淡い紫色の長袖ワンピース。

値札には値下げシールが2度貼られた形跡があり、定価よりも4割ほど安くなっている。



「来栖さんが試着している間、何回も手に取ってたから。気になって」

「……」

「お父さんからのお小遣い、まだある?」

「ある、けど……」



予算内に収まらなかった時のことを考えて、念のため、全額持ってきた。

お土産代とカット代にしか使ってないので、まだ半分以上残っている。


補充品などの買い足すものは、一通り先週に購入した。

クローゼットも空いている。誤魔化すためのお年玉貯金も、少しだけどまだ残っている。

節約生活なのは変わりないが、買えないことはない。
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